• 森林整備によって、副次的に生み出される山の恵みをおすそ分け

    2019年05月24日山梨日日新聞
    2019年05月25日山梨日日新聞

    採石業者が出す汚泥の流出によって、富士川の支流である早川の水が濁り、 河口の駿河湾でサクラエビが取れなくなったという理屈である。

    たしかに、上流の濁水が下流の環境に影響を及ぼすのは当然である。

    しかし、私は当地で森林組合の現場作業員として山中を駆け回っていたので、記事に書かれていない現状が分かる。そもそも、雨畑ダムの上流、約1000mには大規模な自然の崩れがあり、土砂を搬出しても追いつかずダムは年中、土砂で埋まっているのだ。

    『河川工学者三代は川をどうみてきたのか』 篠原修著

    堂々の全国第2位、ほぼ100%土砂である。早川が濁っているのは、ダムの上流に自然の大ガレがあり、それをダムで遮っているために砂がたまるからである。その土砂がシルク状になり水とともに流れ出るのである。採石のみの問題ではなく、こんな環境の場所にダムを作ったこと自体が問題なのだ。

    サクラエビに影響が出ているのならば、もちろん他の生き物、環境にも影響が出ている。また、汚泥を全て産業廃棄物として処理したからといって環境が直ちに回復するわけでもない。

    では、雨畑ダムの管理者である日軽金とはどのような会社なのであろうか?私も地元にいたので名前はもちろん知っている。また、富士川河口のの静岡県清水にアルミニウムの精錬工場を持っている。アルミニウムを精錬するのには大量の電力を必要とするため雨畑にダムを建設したのである。ここまでは知っていたが、少し調べてみると、1939年創業で、もともと古河財閥の企業であった。戦前、戦中、戦後と日本の発展とともに成長してきた典型的財閥企業であることが分かった。(本日の株式時価総額は1463億円)

    雨畑ダムは民間の事業用ダムだが、これは国策事業と言っても過言ではないだろう。ダムが環境に及ぼす影響とは?次回に続く。