• 森林整備によって、副次的に生み出される山の恵みをおすそ分け

    -素材を活かす技、暮らしを映すかたち-

    民家とはなにか?

    本作の定義では、民家は地域の暮らしの器として、地域の素材と技術を用いて、地域の風土に適応して作られた家である。地域に適応し、人それぞれ多種多様な家があるということだ。

    今の家は日本全国どこを取っても同じハウスメーカーの造りである。

    だとしたら、今の家は民家ではないということだ。

    まず、民家を作る上で重要なものは素材である。

    今みたいに、材料がないから他所から持ってくるというようなことはしない。あるものを前提でつくるのである。

    地域によって生えている樹種が違うし、戦争時なんかはそもそも木を全て使ってしまっているので、山はすべてハゲ山になっている。

    だから木が少ない時代には土や竹を多用する技術が生まれ、島など木が生えない土地では石を使う。屋根には茅を使うことで地域に適応してきた。

    また、茅葺を葺き替える際にでる古い茅は肥料として使うことでまさしく持続可能な家を実現している。

    気候変動が叫ばれる昨今、ハウスメーカーが作る全国画一の省エネ住宅が本当に持続可能かどうかははなはだ疑問である。地域の素材を使わず、特殊な部材を世界中から運搬し、短い期間で建築するため地元への経済的寄与は少ない。

    このように書くと、歴史は後戻りできないとか、そういう議論になるのかもしれない。

    だが、世界中から素材を集めて作られた今の家が、50年後、60年後に特殊な部材を取り寄せ修繕することは可能なのか?

    山を管理し、素材を生産する山師としてそこだけは肝に命じておきたい。

    著者である安藤邦廣さんが行っている、落とし板倉での家づくりのデモ動画