本日の一冊『実力も運のうち 能力主義は正義か?』
著者はハーバード白熱教室で有名な哲学者マイケル・サンデル。
能力主義の欺瞞を知らしめた一冊である。
能力主義とは、自分が獲得した能力は自分の努力と才能のおかげであり、その結果、得た報酬は全て自分のものであるというもの。努力した人は報われる。怠けた人は報酬を得られない。
これは現在のアメリカをはじめ、グローバルな新自由主義を実践している国々では、社会的成功者、非成功者全ての市民が共有している認識である。もちろん日本も安倍・菅政権の成果のひとつである。
例えるならば、崖の上で暮らす民族がいるとする。
領土の中の食べ物だけでは全ての人を養うことはできない状況下、驚異的な跳躍力をもった子供が生まれた。
人々はこの子なら、あの崖を飛び越えて向こう側に見えるあの食べ物を取って戻ってこられるかもしれないと考える。
そしてこの子の持って生まれた才能を開花させるために食べ物を持ってきたり、練習に付き合ったりして協力する。
みんなの協力の甲斐があって、あの子はついに初めて崖をとび越えて領土の外へ出て肥沃な大地におりたった。
皆が喜ぶ。新たな一歩だ。
私たちはこれからも発展していけると。
そこであの子が言う。「これは自分の努力と才能のおかげだ。この食べ物は全て自分のものである」と。
こんなバカなことは、誰も認めない。まず第一に道徳に反するではないか?
しかしこのような現状を賞賛しているおかしな国と国民がいる。それがグローバルな新自由主義を実践している国々である。
さもしい人々とは、能力主義者のことだろう。
能力主義の対抗として本書で掲げられているのは、労働による生産は消費が最終目的ではなく、生産することにより社会から必要とされているという承認を得ることである。
この観点から、今回の衆議院選の各党の公約を見れば、欺瞞も見えてくるだろう。