アウトサイダー文学として、外せない作家であるウィリアム・バロウズ。
代表作『裸のランチ』は、作家が書いた文章をバラバラに切り裂き、やたらめったら貼り付けただけのものである。
その手法はカットアップなどと言われているが、要は文章の切り貼りである。
当然、その文章は誰が読んでも意味をなさない。
しかし、その臨場感には驚かされる。
言語によって、意味ではなく、直接、脳に訴えかけてくる。
まるで、見たこともない他人の悪夢に迷い込んだような感覚である。
このような印象から、とっつきにくい作家という烙印を押されているが、熱狂的ファンがいることも事実である。
また、小説もたくさん書いており、文章の意味が理解できないものではない。
バロウズの臨場感とはどのようなものか、処女作の登場人物の男を形容した文章をここに引用する。
『この男の今は存在しない昔の職業とは何だろうか?明らかに使用人階級の職業で、何か死者に関係のあるものに違いないが、死体に防腐処理を施す仕事ではない。ことによるとこの男は自分の体内に何か寿命を延ばす物質をたくわえていて、それを周期的に主人にしぼり取られていたのかもしれない。何か想像も及ばぬほど不道徳な役目を果たすために昆虫のような特殊な専門的機能をもっていたのだろう』・・・